青の夏。画材店で泣く。

TVで、被災した佐伯一麦松本竣介という13歳で失聴した画家の絵を紹介していた。青の色。哀しみの聴こえてくる静かな色。


同じく被災した友人に幼いころ失聴した女性がいて、連れ合いを亡くしたという。


彼女は草木染めをする人。常日頃、「色は人を元気づける」と言っていた彼女。しかし、今は心を閉ざしているという。


震災の時、音がなくなって、その時の空の妙な青さが聴者には印象的だったらしい。


彼女のことを気にかける佐伯一麦は、手紙を綴る。紙がない所では聴覚障害者は「空書」するが、彼女は空にどんな文字を書くのだろうかと。


西宮北口へ。久しぶりに外。日差しは強くないのだが両目の奥を射て、不安感を誘う。


昔の西宮北口駅の写真がかかっていた。


千鳥饅頭


老舗画材店「甲風画苑」。


種類も豊富な画材、粘土、額縁…。


ぼろぼろ泣けてきた。ずっと泣いていた。
富山から逃げてきて、こんなに泣いたのは初めてだ。


いろんな感情がない交ぜ。


阪神大震災の時、何もかもボロボロになったのに、川一つ向こうを越えた大阪ではみんなおしゃれしてパフェなぞ食べていて、脱力した。あの感じにも近い。


富山では粘土、子どものおもちゃ用のが百均にあるぐらいだったのに、ここには私のよく使うプロユースのものが何種類も。


法学部でなくてやはり美大に行けばよかった、とも。自分を抑えていた。


でも、今更美大には行けない。京都の芸大も、教授は既に私の後輩。東京芸大大学院も後輩。行きにくい。親戚にもわらわら画家がいて日展などに出している。裏の裏を知っている。だからこそ、美大には行かなかったのだが…。今も美術の世界、めちゃめちゃらしいが、それでもやっぱり…。


お店の夫婦、不審に思ったことだろう。


「アクタ」。たこ焼き「くくる」でスタンダードなたこ焼きを食べる。作り置きでやや冷めてる分だが、80点のおいしさ。


しかし、アクタ、閑散。田舎のしょぼくれたスーパーのようになっていた。阪神大震災後、商店街や住民を救うために建設されたもの。何年か前までは賑わっていたのに。


西宮ガーデンズにお客取られてる。その西宮ガーデンズも大阪に客足奪われて。凄まじいことだ。


腹の白くなった蝉が、どこにも止まれずバタバタバタバタ飛んでいく。狂おしい。


バス停近くの一本の樹に、びっしり蝉が。ざっと見ただけで9匹。蝉、もう終わりなんだろう…。


コープで届いた冬瓜がやたらと大きいので、自分用と両親用に夕食を作る。


私用には冬瓜のスープ。生姜と醤油だけ。


両親用には生姜と葱たっぷりの肉団子を作ってウェイパーで隠し味をつけた、肉団子と冬瓜の中華風煮込み。両親には肉や普通一般の調味料、砂糖、鰹だしなどを使う。味見はしない。でもおいしいと喜んでくれている。


自分の冬瓜スープをいただく。透き通って綺麗…。


今流行りの服も着られない、哀しみと悔しさの、それでも夏だ。